最初に言うと、この映画は紛れもない傑作であり、全てのスター・ウォーズファンが望んでいた映画である、と私は思っている。

以下、出来るだけネタバレにならないようにレビュー。

この映画を通して、色々な事を考えさせられた。
まず、スター・ウォーズというシリーズには、ファンである私達でもあまり意識しないような演出や、パターンの癖というものがあるという事。

この映画、重要なエッセンスになり得る部分、世界観等は今までのシリーズと変わらないが、細部の魅せ方、演出には従来のパターンに捉われない、新たなものが取り入れられている。それが良い方向に作用し、従来と同じ世界観に極めて斬新な印象が与えられている。

その変化として特筆すべきは、この映画には、従来のスターウォーズに比べて、”彩り”が少ないという点だ。

登場するキャラクターや武器、戦闘機、建造物等は、ほとんどが黒や白、灰色、茶色等の地味な色味で統一されている。

もちろん、帝国軍のシンボルカラーがモノトーンであるという事も影響しているのだが、反乱軍側も、オレンジのパイロット服を着た人がそんなに出てこない。旧三部作では、反乱軍と言えばあの制服と言っていいほど印象的なアイコンであり、反乱軍のシーンはあの制服で埋め尽くされていたのとは対照的だ。

これによって、この映画、また主人公達、ローグワンが、反乱軍のエリートパイロットや、ジェダイのような従来のスター・ウォーズにおけるヒーロー像とは別の所を目指しているという事が印象づけられている。あるいは、同じような色味を両者に共通させる事で帝国軍と反乱軍との境界を曖昧にし、かねてから監督も語っていた、善悪二分化からの脱却を表現する事にも一役買っている。

しかし、この映画はそこでは終わらない。最終盤になり、一つの鮮烈な”彩り”が出現する。これは、スター・ウォーズを観た事がない人ですら、誰もがよく知っている”彩り”だ。そしてその登場とともに物語は一気に繋がる。そう、1977年の、スター・ウォーズに。そして、同様に気付く。私達が今までスター・ウォーズに見出だし続けてきた”彩り”はこれだったのかと。今までのシリーズではそれが出てくるのが当たり前すぎて気付かなかった”彩り”である。

ネタバレにならないよう詳細は記せないが、それに気づいた瞬間、思わず目頭が熱くなった。こんな経験は初めてだったし、その経験だけで、この映画を自分にとって大切なものにするには充分だった。

そして最後に、CGについて。
プリクエル・トリロジーでは、多用しすぎとの批判が相次いだCG技術。自分はプリクエル支持者だが、昭和怪獣特撮が好きな事もあり、映像作品におけるCGの多用が許せないという気持ちには共感する所があった。

エピソード7では、その反動か極力実物撮影というスタンスで撮影が行われたが、やはり空中戦等、CGが多用される場面も少なからずあった。

今作でも、そのようなスタンスは継承されており、エイリアンやセット等、実物は多く制作された。しかし、今までに無い形でのCG利用がなされているのだ。
厳密には、今までのシリーズにも使われている技術だが、これだけ大々的に用いられるのは初めてである。

そして、このCGの用い方に関しては、少なくともCG利用について否定寄りであった自分の目から見ても、堂々と正解だと思えるのである。このような利用の仕方は、これからのシリーズにおいても大きく可能性を広げられるし、これだけの事が出来るなら、これからのCG技術の発展、映画利用を素直に喜べるな、と思えた。

今の所一度しか鑑賞していないが、以上に述べた事柄や、さらにその他あらゆる事について考察を深められる上、とてつもなく高い完成度を有する映画である。

ただ、この映画、エピソード7の時と比べてプロモーションの規模がだいぶ縮小したな、と思っていたのだが、その理由に関してはなんとなく分かった気がする。

この映画は、過去作品1~6を視聴した事があり、かつスター・ウォーズという作品に対する愛情が無ければ、その良さが存分に伝わりにくいのである。

それは、随所に散りばめられたオマージュ、専門用語等が、どのエピソードからも引用されており、その数もなかなかに多いという事が理由であると思う。

それ故、初心者からヘビーフリークまで、世代も性別も問わない大衆映画的な性格が強かったエピソード7と比較すると、万人へのウケを狙うというのはやはり難しいのではないかという印象はややある。

しかし、自分はせっかくのスピンオフなのだからこの映画はこれで良いと思うし、むしろ全てのエピソードを熟知しているからこその深みの出る映画であるという点で、そういったカルト的性質は肯定的に評価出来ると思っている。

とどのつまり、この映画は、1~6をしっかりと頭に入れた上で観る事で、その真価が分かるだろうと私は思う。

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