2016年、1発目に舞い込んだスキャンダルがタレントのベッキーと人気バンド「ゲスの極み乙女」のボーカル、川谷絵音の不倫報道。この2人に限らず不倫をした代償として離婚の危機や慰謝料に悩まされる人も少なくない。現状、日本では約2分に1組の夫婦が離婚を選択し、中でも不倫(不貞行為)は常に離婚理由の上位にランクインしている。そこで、夫婦問題に詳しいアディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士が、避けて通れない「不倫の慰謝料」について解説する。

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●不倫をするとなぜ慰謝料が発生するのか?
 慰謝料とは、不倫をされたことによって傷ついた精神的苦痛を慰謝するための賠償金です。不倫と言う不法行為により、円満な夫婦生活を送る権利を害されるため、これに対して慰謝料を払ってもらうということになります。

●慰謝料の相場とは?
 実は、慰謝料の金額については、明確な基準が設けられているわけではありません。どれだけ傷ついたか、の金額なので、ケースバイケースといえ、婚姻期間の長短、不倫の程度や悪質性などにより、かなりの幅やばらつきが出ます。
裁判に至った場合の目安としては、
(1)離婚も別居もせず、夫婦関係を継続する場合…50万円~100万円
(2)不倫が原因で別居に至った場合…100万円~200万円
(3)不倫が原因で離婚に至った場合…150万円~300万円
といったところでしょうか。

以上はあくまで裁判上の目安なので、話し合いで解決する場合、さらにケースバイケースとなります。不倫をした側が、問題の早期解決を強く希望する場合、離婚に至らなくとも離婚した場合と同程度の高額な慰謝料を払ってもらうケースもあります。慰謝料の金額は双方の話し合いの結果なので、双方が真に合意する以上は、いくら高額になっても構いません。「裁判は避けてほしい」ということで、相場より多くの慰謝料を支払うことは珍しいことではありません。

■札束の部分は紙です。イメージ写真です。

●慰謝料の増減理由
 慰謝料の金額は、不倫の程度や悪質性だけでなく、その他一切の事情を考慮して決定されます。具体的にどのような理由で左右されるのでしょうか。そのいくつかをご紹介しましょう。

(1)婚姻期間…長期間の信頼を裏切られたという心情や離婚後の再スタートが困難になりやすいという理由から、婚姻期間が長いほど慰謝料が高額になる傾向があります。
(2)婚姻生活の状況…浮気が発覚するまでの夫婦関係が円満であればあるほど、浮気によって家庭を崩壊させた側面が大きいと判断され、責任が重くなる傾向にあります。
(3)不貞相手の認識…不貞相手が、夫(妻)を「既婚者であり夫婦が円満」とどこまで知っていたかです。既婚者であると過失なく知らなかった場合や、夫婦関係が破たんしていると過失なく信じていた場合には慰謝料そのものが発生しませんが、逆に知っていて家庭を壊すつもりだった場合などは悪質と判断され増額の可能性があります。
(4)夫婦間の子供の有無…浮気が原因でショックを受けることを考慮し、夫婦間に子供がいる場合は増額要因とされています。
(5)精神的苦痛…うつ病になるなど、浮気によって大きな精神的損害が発生し、それを裏付ける証拠(診断書など)があると、増額の可能性があります。
(6)自分自身の落ち度…夫(妻)が浮気をするようになった落ち度(性交渉に応じないなど)が自分自身にある場合は、慰謝料は減額される傾向にあります。
(7)浮気の期間、頻度…浮気の回数が1回の場合よりも長年にわたり繰り返されている場合の方が高額となりやすいです。

このように、慰謝料は実に様々な事情やケースを総合的に考慮して、増えたり、減ったりするものなのです。

 実際、夫(妻)や浮気相手に慰謝料を請求する場合には、「こんな事情もある」「こんなこともあった」となるべく多くの事情を主張し、立証できるかが金額の増減に大きく関わってきます。「浮気されて辛かった」という主張だけでは事実認定が難しく、相手が否定した場合には証拠が必要となります。その場合、「愛している」というメールのみでは不貞行為を認定するには弱いですが、その他にも「外泊をした証拠」「誕生日プレゼントや2人での旅行を証明する領収書」などの証拠と組み合わせることで証明が可能となりうる場合もあります。
 「携帯のメールを盗み見ていいの?」「写メは証拠になる?」など、どのような証拠をどうやって集めればよいのか判らない人がほとんど。傷ついた心に見合う慰謝料をきちんと請求するためにも、実務経験と専門知識を持っている弁護士に相談してみることをおすすめします。

教えてくれたのは…弁護士:篠田恵里香先生

篠田先生 (2)

東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。 債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。 また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有。 外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、 独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。 『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(CBC/TBS)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、 多数メディアに出演中。

ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」http://ameblo.jp/erika-shinoda/

アディーレ法律事務所:http://www.adire.jp/

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