ビジネスパーソン

昔から企業内でよく見かける風景ですが、あなたの会社では新聞や雑誌の記事をコピーして回覧していたりしませんか?
限られた組織内でトピックを共有するため、または業務に役立てるために、他社の記事が掲載されている箇所をコピーし社員に閲覧させる。または社員が閲覧できるネットワーク上に、新聞記事等がアップロードされて閲覧できるようにしている場合も有りますよね。

新聞や雑誌の記事は、事実の伝達に過ぎない記事を除き、記者が工夫を凝らして創作した著作権法上の著作物に該当すると考えられています。社内での回し読みは著作権法違反になるのでしょうか。
今回は法律の豆知識をお届けします。

著作物のコピー閲覧は立派な法律違反!

まず結論から言うと、社内での新聞や雑誌のコピーを回覧することは、著作権法に違反します。

著作権法では、「私的使用の目的で有れば、著作権者の許諾を得ないでも著作物のコピー(著作権法第30条)ができる」という規定があり、一定の範囲で著作物の利用を認めています。
しかし、会社の中での複製の回覧行為は、過去の判例で「会社内部でしか利用しない場合でも、業務上利用する場合には、私的利用目的とはいえない」(東京地裁昭和52年7月22日「舞台装置設計図複製事件」)としたものがあり、著作物の複製権の侵害となるのです。このため、無許可での社内回覧のためのコピーは著作権者の許諾が必要となります。

社内での回覧にも著作者への確認が必要なの?

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では、どうしてもコピーして回覧したい記事がある場合、一々著作権者に連絡して許諾を得なければならないのでしょうか?
さすがにそれは、申請も煩雑で時間がかかってしまうので、合理性に欠けているといわざるを得ません。

そんな手間を省くために、多くの企業が利用しているのが「公益社団法人 日本複写権センター」です。
ここは、著作権者から権利行使の委託を受けて、利用者から使用料を受領することで、企業内での複製ができるようにしている団体です。あらかじめこのセンターと契約することで、当該団体が管理を受託している著作物の複製に関し、特別な手続きを必要とせずとも著作物の複製が可能となります。

新聞や雑誌の原本を回覧するのは合法?!

なお、新聞記事等を切り抜いて、現物をそのまま回覧する場合は、著作権法上の侵害とはなりません。
え?どういうこと?と思われるかもしれませんが、新聞や雑誌など購入したものそれ自体を回覧するのは著作権法違反にはならないのです。ややこしいのですが、購入した新聞や雑誌を回覧するのは、購入者の自由とされています。

あくまでも「コピーをしたもの」を回覧するのは、法律違反となる、と覚えておきましょう(著作物をコピーする行為は「複製権の侵害」に問われる場合もありますよ)。

新聞記事のコピーを回覧して裁判になったケース

過去には、社内LAN上に、新聞記事を無断で掲載してしまい、著作権侵害をとわれた事件があります。「社会保険庁LANシステム事件」と呼ばれる事件で、社会保険庁の職員が新聞記事等を電子化して庁内の「新聞報道等電子掲示板」にアップロードし、職員に閲覧させてしまったという事件ですが、この裁判では、庁内LANにアップロードする行為は、公衆送信権の侵害であると認められました。

「うっかり」や「知らなかった」は通用しない

様々な法律のすべてを把握しておくことはなかなか難しいことですが、ついうっかりやってしまったり、知らずにやってしまったりしても、違反は違反です。
思わぬところで訴えられたりすることがないように、日頃から会社の法務担当者に確認をするなどして、法律違反をしないよう努めたいですね。

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