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2019年ラグビーワールドカップ、そして2020年東京オリンピック・パラリンピックが目前に迫っています。それに伴い、東京の街にさまざまな変化が見えてきました。

中でも注目度の高いものが「東京都受動喫煙防止条例」です。多くの外国人を迎えるにあたり、今年から喫煙のルールがこれまで以上に厳しくなります。

ますます肩身が狭くなることを心配する愛煙家も、もっと街をクリーンにしてほしいと願う嫌煙家も、この条例の施行によって東京の街がどのように変わるのか見てみましょう。

東京都が受動喫煙防止条例を制定

東京都が正式に受動喫煙防止条例を制定しました。その内容を見ていきましょう。

−どんな条例なの?

東京都が2018年6月に制定した受動喫煙防止条例は、やはり2018年7月に成立した国の改正健康増進法よりも厳しい規制内容になっています。東京オリンピック・パラリンピック前の2020年4月に全面施行されます。

この条例は、屋内での受動喫煙が招く健康への影響を防止することを目的としており、特に影響を受けやすい子供、受動喫煙を防ぎにくい立場の従業員などを守ることを対策の柱としています。弱い立場の人たちを中心に、誰もが快適に過ごせる街にするための、都独自の新しいルールというわけです。

主な内容としては、子供を受動喫煙から守るため、学校などでは敷地内禁煙となります。加えて、子供の喫煙室の立ち入り禁止や喫煙・受動喫煙の健康影響に関する教育が徹底されます。

また、従業員を受動喫煙から守るために、飲食店などでは原則屋内禁煙(禁煙または喫煙専用室設置等)となります。

さらに公衆喫煙所の整備や改修のための区市町村への補助、事業者の喫煙専用室整備補助、
喫煙専用室を整備する中小飲食店、宿泊施設への補助なども積極的に行う内容となっています。

−タバコが吸えなくなるのはどこ?

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では、実際にタバコが吸えなくなる施設にはどんなものがあるでしょうか。

敷地内禁煙となるのは学校、医療機関、児童福祉施設、行政機関、バス、タクシー、航空機などの施設です。こちらは主に子供の受動喫煙を防ぐ目的です。これらの施設うち、屋外に喫煙場所設置が可能となる施設もありますが、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校などは、屋外喫煙場所の設置もできません。喫煙者の先生たちにとっては、なかなか厳しい状況となるわけです。

また、原則屋内禁煙となるのは、老人福祉施設、運動施設、ホテル、事務所、船舶、鉄道、従業員がいる飲食店など、不特定多数の人が利用する施設です。喫煙専用室がある場合のみ喫煙が認められます。こちらは、そこに勤務する従業員の受動喫煙被害を抑えることが大きな目的です。

職場や美容室などももちろん屋内禁煙の対象。また、大学構内では屋内(校舎内)は完全禁煙、屋外に基準を満たした喫煙所を設けることができるようになります。

いずれにせよ、愛煙家にとってはこれまで以上に肩身の狭い日常が待ち受けていそうです。

飲食店の8割が禁煙に

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影響が大きそうなのは、やはり飲食店が原則屋内禁煙になることでしょう。この条例により、都内の飲食店の84%、約13万件が規制対象になると言われています。

これまでビールを飲みながらタバコが吸えた居酒屋なども、これからははっきりと規制対象。喫煙室のない店では、吸うことができなくなります。対象外となるのは、従業員(アルバイトも含む)を雇っていない個人や家族経営の飲食店。この場合は禁煙か喫煙かを選ぶことができます。

ちなみに火を使わない加熱式タバコは、「加熱式タバコ専用喫煙ルーム」で飲食しながら利用することができます。つまり、加熱式タバコ専用喫煙ルームのある飲食店では、入店時に客が「禁煙or加熱式タバコ喫煙」の二択から選ぶことになります。

この条例は、2019年9月のラグビーワールドカップまでに一部が施行され、飲食店は禁煙や喫煙可の区分を示すステッカー(標識)を店頭に貼ることが義務付けられます。
今後、愛煙家の皆さんは、このステッカーを参考に、タバコが吸える個人経営の居心地のいい居酒屋を探す必要がありそうです。

国の施策よりも厳しい都の条例

都が制定した条例は国が定めたものよりも厳しい内容となっています。詳しく見ていきましょう。

−健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号) 概要

先にも触れましたが、東京都の受動喫煙防止条例とほぼ同時期に、国(厚生労働省)の改正健康増進法が成立しています。どちらも喫煙に関するルールですが、この2つはどう違うのでしょうか。

大きな特徴として、どちらも飲食店などの多くの人が出入りする施設では屋内での原則禁煙をうたっています。しかし、その違いは対象外となる施設の多さで、国の規制は東京都の規制に比べてかなり「ゆるい」と言えそうです。

説明した通り、東京都の規制対象は「従業員がいるかどうか」です。これに対して国の法令では、従業員の有無は関係なく「店の規模」が規制の条件です。具体的には「客席面積100平方メートル以下で、個人または資本金5000万円以下の事業者の店」が対象となっています。

国の規制では全国で約45%の飲食店が対象になると見込まれており、これはつまり半数以上が対象外になるということ。都内の84%の店が対象となる東京都の規制のほうがかなり厳しいことがわかります。

受動喫煙の健康被害

そもそも、どうしてこんなにも喫煙のルールが厳しくなっているのでしょうか。
それは受動喫煙の健康被害がはっきりとしてきているからです。

他人の喫煙によってタバコから発生する煙(タバコの先から出る「副流煙」、喫煙者が吐き出した「呼出煙」)にさらされる受動喫煙は、肺がん、乳幼児突然死症候群、虚血性心疾患などのリスクを高めるとされています。

また、厚生労働省の調査では、受動喫煙で年間に約1万5000人もが死亡しており、受動喫煙のある人はない人に比べ、肺がんにかかるリスクが約1.3倍になると言われています。

それほど受動喫煙による健康被害は大きいことがわかっているのですから、喫煙に関する規制が厳しくなるのは時代の趨勢なのです。

これを機に禁煙にチャレンジを

東京都はもちろん、全国いたるところで喫煙者はどんどん隅に押しやられています。駅の喫煙ルームなどで、肩を寄せ合ってタバコを吸っている人を見ると「なんだか可哀想」という感情も湧き上がってきますが、この流れはもう誰にも求められないでしょう。

喫煙が健康に悪影響をもたらすことははっきりしています。ですから、ワールドカップやオリンピックという健康的なスポーツイベントを機に、愛煙家の皆さんも禁煙に挑戦してみてはいかがでしょうか。成功の暁には「自分で自分をほめて」あげてくださいね。

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