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こんにちは。
キングソフト、管理部門担当役員の小林です。

昨今、「働き方改革」という言葉をよく耳にする。「働き方改革」とは何か?
マニュアル的な回答としては、労働環境を大幅に見直す取り組み、具体的には、長時間労働の常態化やそれに起因する過労死、非正規労働者に対する不合理な待遇差など、働き方に関連する問題を改善していこうという試みのことだろう。

この取り組みに対して、疑問を差し込む余地はない。大いに賛成だ。
ただ、一方で、カジュアルな服装で出社し、フリーアドレスにより固定化されていない自由な席に座り、定時に帰り、ショッピングを楽しんだり、同僚と酒を酌み交わしたり、ジムに通って、ぼくは、わたしたちは、当社は、「働き方改革」を体現しています、と主張する企業なり個人を目にすると、率直なところ、違和感を覚える。

間違えてほしくないのは、長時間労働をはじめとする旧態依然とした働き方を是としているわけではない。無理に長時間働く必要などないし、死に至るまで仕事に身を捧げる必要などまったくない。

そういうことではなく、何というか、社内での事柄に目を向けすぎなのではないかと思うのだ。言い換えると、あまりにも働いている時間を改革することに目を向けすぎなのではないだろうか?

僕が考えるに、「働き方改革」はすなわち、「働いてない時間を改革」することだと思う。労働時間が短縮された分、会社を出たあとの時間をどう過ごすか、何をするか、そのことについて考えを巡らせるべきなのではないか。

前述したように、ショッピングをするでも、酒を飲むでも、ジムに通うでも、もちろんいい。自由だ。他人がとやかく言うことではない。ただ、ひとつ言えるのは、おそらく社会人が10人いるとしたら、7、8人は同様の過ごし方をしていると思う。

個人差はあるだろうが、会社勤めをしている人間なら、誰しもが他者より秀でたい、差別化された存在でありたい、そう思っているはずだ。他者より上回っていたい対象は、給料であったり、能力であったり、肩書であったり、様々だとは思うが、とにかく、何かにおいて他者と差をつけたいと思っているはずだ。

でも、残念ながら、同じことをしていたら同じようにしかならない。
同じものを口にしていたら同じような体型になるのと同様、同じ時間の過ごし方をしていたら、同じような存在にしかなり得ない。

僕は30歳の頃から3年間、就業後にビジネススクールに通い、ファイナンスやマーケティング、組織論など、いわゆる経営学を学んだ。スクールには、様々な業界の様々な職種、立場の人間が通っていた。上場企業の社長もいれば、ミュージシャン、医者、弁護士、モデル、種々雑多。

家庭を持ちつつ、仕事をしつつ、週に2、3回スクールに通うのはタフな時間であったが、通ってよかったと思うことが1つある。それは、正攻法でいってもこの人たちには絶対に勝てないなと悟れたこと。

ビジネススクールに通おうと思うくらいだから、前提として皆向上心が非常に高い。講義がない日でも、平日夜や週末に自主的に集まって勉強会をしたり、自分たちの仕事に対して意見交換をおこなったりしている。その上、総じて、頭がすこぶるいい。自頭がいいだけではなく、知識量も豊富。さらに、思考もポジティブ。酒が入ろうがなんだろうが、仕事や会社に対して後ろ向きな発言が出てこない。スクールに通っていた3年間、凡夫の僕は、劣等感しかなかった。

繰り返すが、正攻法でいってもこの人たちには絶対に勝てないなと悟った。だから、戦い方を変えた。スクールに通っていた当時、周りはビジネス書を読み耽っていたが、僕はビジネス書はそこそこに、小説や詩を積極的に読むようにした。周りが勉強会をしている時間、僕は美術館を巡ったり、映画を観ていた。

論理や理屈、自頭では到底勝てそうにないので、感覚や感性で差別化を図ろうと思ったのだ。自分で言うのは口幅ったいが、この狙いは結構うまくいったと思う。スクールでは毎回のようにレポート提出及び発表をさせられるのだが、発想や文章力、レポートの質みたいなところでは、周りよりも優れていたと自負している。

ビジネススクールを卒業したあとも、その習慣は変わらない。
もちろん、仕事終わりにお酒を飲んだりショッピングをすることもあるが、大抵は本を読むか、映画を観るか、遅い時間まで開いている美術館に足を運んだりしている。単純に好きということもあるが、それよりも、ドラッカーを読むのならヘミングウェイを、酒を飲むのなら映画を観ながらコーラを飲んでいた方が他者との差別化につながるはずという動機が主だ。

「働き方改革」が浸透すればするほど、僕は個人間の差は開いていくのではないかと思っている。働き方改革により、労働時間が短縮されるということは、会社にいない時間が長くなり、個人の裁量に委ねられる時間が長くなることを指しているのだから。

フリーアドレスやリモートワーク、カジュアルな服装、定時退社。それらは手段であって目的ではない。今の時代において、特別でもない。その上で、何をするか。「働き方改革」を実現したのち、「働いてない時間」をいかに改革するか。それが大事なのではないだろうか。

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kobayashi

小林 慎太郎 こばやし しんたろう 1979年東京都出身。立教大学社会学部卒。SIerにてエンジニアとして従事。 その後、サービス業界において人事部門などを経験した後、 2013年キングソフト入社。2018年8月より、人事や総務、経理といった管理部門管掌の取締役を務める。

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