「ますますタバコが吸いづらくなるのでは…」と戦々恐々とする愛煙家も多いことだろう。もちろん、厚生労働省が動きを進める健康増進法改正案の件である。「禁煙対策後進国」と言われてきた日本でも、東京オリンピック・パラリンピックに向けて喫煙規制をより強化する方向に向かいつつある。しかし、なぜこのタイミングで動きが進むのだろうか?狙いは何だろうか。禁煙が進むと、誰が得をするのだろうか。今回の記事では、禁煙規制の本当の狙いと関係者の動きを整理する。

厚生労働省による規制強化案の発表

tabaco

2017年3月1日、厚生労働省は受動喫煙対策として喫煙規制の強化案を公表した。それによると、小中高校や医療機関は屋内外問わず「敷地内禁煙」、官公庁や運動施設などは「建物内禁煙」とされている。また、小規模(床面積30平方メートル以下で、換気することなどの条件あり)なスナック・バーを除く飲食店は、屋外テラス咳を含めて原則禁煙とし、喫煙室の設置だけは認める方向となっている。

狙いは「禁煙後進国」からの脱出?

その狙いは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本の喫煙規制を先進国並みに引き上げる点にあるとされている。すでに欧米のほとんどでは、飲食店や街頭を含めて全面的に禁煙である。外国人が日本に来ると、町中や店内で多くの人が喫煙している光景に驚くことも少なくないという。
東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人が訪日する2020年までに、こうした喫煙や禁煙に対する法律の差や意識の差を埋めておきたいという意図がある。

喫煙による健康被害はどれくらい?

厚生労働省は、喫煙による死亡者数が年間12~13万人にのぼると推計している。このうち、自分では喫煙しないものの、受動喫煙で肺がん・虚血性心疾患を引き起こして死亡したのが6800人。がん死亡の約20~27%が喫煙によるものとして、「喫煙しなければ予防可能」であるとしている。

参考:たばこアルコール担当者講習会 | 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室
(URL : http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/dl/120329_1.pdf

これが正しいとすると、喫煙による健康被害はきわめて深刻と言わざるを得ない。
オリンピックというきっかけはあるにせよ、厚生労働省としては継続的に喫煙規制を強化していきたいと考えるのも当然だろう。

飲食業界の反発

Quit smoking, human hand breaking cigarettes with hammer

飲食業界は、一律に喫煙規制を強化しようという厚生労働省の案に反発していると報道されている。
特に反発が強いのが居酒屋業界。飲酒とタバコはきわめて相性がよいため、今後居酒屋で喫煙が許されなくなった場合には客の減少が予想される。小規模店であれば、常連客の足が遠のくことで死活問題となりかねない。実際、日本フードサービス協会は「店頭の掲示などで喫煙、禁煙、分煙を顧客が選べるようにすべきで、一律の規制は反対だ」と述べている。
こうした飲食業界と厚生労働省、医師会とは完全に利害が対立しており、妥協点を見つけるのは難航すると考えられる。

「禁煙ビジネス」としての新型電子タバコ

その一方で、喫煙規制の強化に反しない「禁煙ビジネス」の萌芽も見られる。最も存在感を示しているのが、専用器具でニコチン入りの蒸気を吸うタイプの「新型電子タバコ」である。特に人気なのが、2015年にフィリップモリスジャパンが発売した加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」だろう。タバコの葉の加熱温度が既存製品よりも低いことで、有害物質の発生量を大幅に下げることができたとされている。ただし、まだ登場して日が浅いため、長期的な影響については決着を見ていない。

禁煙外来で医者と厚労省が利害一致?

もう一つの可能性が禁煙外来である。「喫煙習慣とはニコチン依存症=病気である」という定義のもと、健康保険などを使うことによって比較的安価に禁煙治療を受けられるようになった。こうした禁煙外来が、今後医療の一分野として確立されるようになる可能性はある。うがった見方をすれば、新たなビジネスチャンスを伸ばしたい医師会と、喫煙規制を強化したい厚労省との利害が一致していると考えることもできないわけではない。

規制強化の流れは変わらない

飲食業界や愛煙家の反発はありつつも、世界的潮流の裏付けを得て日本でも規制強化の流れが進むのは避けられないだろう。愛煙家としては、新型電子タバコの発達と値下げ(現在は10,000円近くかかる)に期待するしかないのかもしれない。

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