「今月お金を使いすぎて生活費が厳しい…」、「転職活動がうまく行かず、収入がない…」など、金策に困ったときに「少額なら大丈夫だろう」と消費者金融やクレジットのキャッシングを利用してしまったことはないだろうか?大丈夫と思い借りていた金額は増え続け、気づけば利子ばかりを支払っている状態に。挙句の果て「元金が減らない」「もう返しきれない…」と途方に暮れ、いつの間にか借金地獄…。そんな窮地に立たされた人を救うための制度『債務整理』があるという。債務整理の実績が豊富なアディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士が「債務整理について』詳しく解説する。

お金

●そもそも債務整理とは?

債務整理とは、借金を整理する方法です。「任意整理」「民事再生」「自己破産」の三種類があり、その人の状況に応じてベストな手続きを選択することになります。まず、「任意整理」とは、借金の残額を、利息制限法の上限金利(15~20%)に合わせて再計算し(これを「引き直し計算」といいます)、減額した元金を3年~5年程度で分割して返済していくという手続です。消費者金融等の貸金業者との間で、「残額~円で何回払い。」といった内容で和解をし、借金を完済するという手続です。原則として利息がカットされるなどのメリットがあります。
次に「民事再生」とは、大幅に減額された借金を原則として3年で分割返済していくという手続です。減額の程度は、借金の額や持っている資産によって異なりますが、通常5分の1程度が目安です。減額後の借金を完済すれば、その他の借金については法律上返済する義務が免除されます。基本的に住宅や車等の財産を維持しつつ、借金を完済することになります。

最後に「自己破産」とは、資力がなく、借金を返済できない状態になってしまったこと(これを「支払不能」といいます)を裁判所に認めてもらい、法律上、借金の返済義務を免れる制度です。自己破産をすると原則としてすべての借金の返済義務がなくなりますので、その後は借金の返済に追われることなく、稼いだ収入を生活費に充てることができるようになります。

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●債務整理をしたら、行った事実が公になるのか?

まず、弁護士に債務整理の依頼をすると、弁護士は貸金業者に対し「受任通知」という「依頼者が債務整理をしますよ」という内容の書類を発送します。これ以降、貸金業者から債務の取り立てが禁止されますので、電話や訪問等の過度な取り立てに対する精神的な苦労から解放されることになります。
債務整理を行うと、「会社を辞めさせられてしまうの?」、「家族にバレてしまうの?」という不安の声が良く聞かれます。しかしながら、「会社を辞めさせられる」というのは、債務整理を理由に会社が従業員を解雇するということですので、そのような解雇は基本的に許されません。また、郵便物の差出人を個人名にする等の方法で、家族に知られず債務整理を行うことも不可能ではありません。「年金受給資格を失う」、「戸籍に記載される」といった噂も事実無根です。
「クレジットカード作成」「ローン契約」「引っ越し」等の際に、債務整理を行った事実が信用情報から判明し、例えば「カードが作れない」「ローンが組めない」「保証会社の審査が下りない」といった制限はありえますが、一定期間を経過すれば登録された信用情報が消えますので、一生影響が続くものではありません。

●自己破産すると、すべての財産が無くなってしまうのか?

まず「自己破産」のメリットは、原則としてすべての借金の返済義務を免れることができるという点です。そのため、自己破産の手続き完了後は、一切借金を返済する必要がなくなります。生活を立て直す上では、この方法が最も経済的に有利です。一方、自己破産は、高価な財産(不動産や車を含む現価が20万円を超える財産。現金の場合には99万円を超える現金 ※東京地方裁判所の場合)が処分されたり、手続の期間中(約3~6ヶ月)は保険募集人等、一定の資格を要する職業には就けない(これを「資格制限」といいます)というデメリットもあります。ただ、皆さんがイメージするような「全財産が処分される」「再就職に不利」といった事情は基本的にはありません。

債務整理
「任意整理」「個人民事再生」では、財産の処分や資格制限といったデメリットはありません。自己破産ほどのメリットはありませんが、借金や返済額が減額されるというメリットもあります。持ち家など処分できない財産がある方は、財産等を維持しながら、月々の返済を無理なく行うことが可能となります。しかし、自己破産のように全ての借金が免責されるわけではありませんので、今後一定期間返済を続けていかなければなりません。

債務整理をすることで借金を整理できれば、1からスタートを切ることができます。しかし、本質的には、返済しきれないほどの借金をしてしまった事を反省し、2回目は無いようにしたいもの。特に自己破産の場合、「1度破産しているから」という理由で2回目の破産は認められないこともありえます。借金問題を抱え込むということは、精神的負担も大きく苦しいもの。お金の使い方や家計状況を見直し、無理な借り入れはしないように心がけて下さい。

 

教えてくれたのは…弁護士:篠田恵里香先生

篠田先生 (2)

東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。 債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。 また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有。 外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、 独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。 『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(CBC/TBS)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、 多数メディアに出演中。

ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」http://ameblo.jp/erika-shinoda/

アディーレ法律事務所:http://www.adire.jp/

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StartHome編集部

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