3つの三部作から考える、『スカイウォーカーの夜明け』の果たした役割

この映画の果たした役割を説明する前に、まず全9作品で構成されるシリーズのややこしい公開順と時系列の関係を説明する必要がある。

・1977年~1983年に公開されたエピソード4~6が「旧三部作」

・1999年~2005年に公開されたエピソード1~3が「新三部作」

・2015年~2019年に公開されたエピソード7~9が「続三部作」

物語の時系列はエピソード1→9と数字の若い順で進んでいくが、公開の順番はエピソード4→5→6→1→2→3→7→8→9である。

・「旧三部作」は、昔は善良だったが悪に染まってしまった父親(アナキン・スカイウォーカー)を、父親の中に残る善の心を信じた息子(ルーク・スカイウォーカー)が命がけで善良な人間に戻すという親子の絆を描いた”原点”の物語。

・「新三部作」は、善良で才能溢れる英雄だった父親(アナキン・スカイウォーカー)が、なぜ悪に染まってしまったかを描く”過去”の物語。

・「続三部作」は、父親を更生させ、銀河を救った英雄となった息子(ルーク・スカイウォーカー)の甥(ベン・ソロ)が悪に染まっていくのを止められなかった”未来”の物語。

つまり、STAR WARSというシリーズは、42年間という歴史の中で「スカイウォーカー」家という一族の”原点”→”過去”→”未来”を描いてきたのだ。

そしてその”未来”を描く「続三部作」の完結編がこの映画『STAR WARS エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』だ。
この映画は「続三部作」のエンディングであるのと同時に、全てのSTAR WARSのエンディングなのである。

「旧三部作」だけを観れば、物語はハッピーエンドで完結するのだが「新三部作」は善良な人間が悪に堕ちていく様を描く極めて後味の悪いバッドエンド、
そして「続三部作」は、「旧三部作」で訪れたかに思えたハッピーエンドの先に、かなり暗い未来が待ち受けていたというやや暗い物語を描いた(エピソード8までは)。

結論から言うと、エピソード9はハッピーエンドで物語が完結する。しかしそのハッピーエンドには、「旧三部作」のハッピーエンドとは比較にならない42年間の重みがある。

それは、悲しい過去を描いた「新三部作」や、暗い未来を描いた「続三部作」のエピソード8までを経験したからこそ生じる重みである。

それまでに経験した悲しみや苦しみの数だけ幸せに深みが出る。それこそ人生の神髄ではないだろうか。このシリーズはそんなことを考えさせてくれる。

シリーズ8作品、そして42年間の歴史の重圧を背負って、この作品はSTAR WARSシリーズを伝説へ昇華させたと考える。

しかし42年間世界中で愛され続けたシリーズの結末に対して厳しい意見は少なくなく、世間的なこの映画の評価は好意的なものより批判的なものの方が多いように見受ける。

だがシリーズ全体としての一貫性、そして続三部作としての一貫性という観点からこの映画を評価すると、合格点に達していたのではないかと思う。

最後のスカイウォーカー「カイロ・レン」を演じたアダム・ドライバーの名演

Kylo Ren Ben Solo

STAR WARSの最もアイコニックな悪役であるダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)の後を継いで、続三部作の悪役となったのがダース・ベイダーの孫カイロ・レン(ベン・ソロ)だ。


祖父であるダース・ベイダーに憧れるあまり、生命維持装置としてベイダーがつけていたマスクを模して自分でマスクを作ってしまったり、自分の思い通りにならないと人や物にすぐ当たったりなどと1作目では子どもっぽい側面や未熟さが目立っていたが、三部作を通じて主人公であるレイとの繋がりを強め、人間として成長していく過程が描かれた(もちろん悪役なので殺人や惑星破壊など悪いこともたくさんしている)。


ダース・ベイダーと彼の異なるところは、ダースベイダーが旧三部作でほとんど素顔を見せなかったのに対して、カイロ・レンはかなりマスクの下の素顔を見せるという点だ(一度怒りに任せてマスクを自分で壊してしまったこともあった)。


そして彼はダース・ベイダーのように雄弁ではない。主人公であるレイが様々な人物に感情をむき出しにして話しかけるのに対して、彼は随所でしかその言葉を発しない。


その寡黙さは『STAR WARS エピソード9 /スカイウォーカーの夜明け』では最も顕著だった。物語が進んでいくにつれて、彼はほとんど言葉を発しなくなる。しかし、言葉では沈黙していくのに対し、彼の表情はどんどん雄弁になっていく。


彼の表情で魅せる演技力があまりにも卓越しているので、製作陣はマスクを被せておくのは勿体ないと判断したのではないだろうか。そう思わせられるほど、彼の雄弁な演技力はこの映画の中で特に輝いていた。

全9作品の総決算となったラストシーン

STAR WARSエピソード1~9は、「スカイウォーカー・サーガ」と称される。
その名称は前述したように、シリーズがダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)やルーク・スカイウォーカーなど「スカイウォーカー」家という一族の”原点”→”過去”→”未来”を描いた作品であることに由来する。


STAR WARSシリーズは今後も数多くのスピンオフ映画の上映が予定されているが、正史であり原点である「スカイウォーカー」の物語は本作で完結する。
サブタイトルの「スカイウォーカーの夜明け」がまさにそれを表している。


そして本作のエンディングは「スカイウォーカーの夜明け」という名の通り、善と悪の両方で名の高い「スカイウォーカー」に、伝説へと昇華する夜明けをもたらした。


「スカイウォーカー」という固有名詞が、単なる名字から伝説の称号へと変わったラストシーンは、STAR WARSという作品が伝説であることすらもあらためて実感させられる心震えるエンディングだった。